2016年7月15日金曜日

米研究者チーム、3Dプリンターの脆弱性攻撃により欠陥製品発生の恐れを警告

米国発:ニューヨーク大学タンドン技術工科校の研究者チームはこのほど、市販されている多くの3Dプリンターでサイバーセキュリティ対策の不備により、プリントアウトされる3D製品に欠陥が生じる危険性があることを警告する研究結果を鉱物 / 金属 / 材料協会( 本部ペンシルベニア州ウォーレンデール )機関誌 JOM 電子版に発表した。

発表したのは同大学機械工学課程大学院生 Steven Eric Zeltmann 氏をはじめとする 6 名の研究者チーム。近年、生産現場ではクラウドベースの分散型3Dプリントによるサプライチェーン構築が急拡大しつつあるが、このようなネットワークにつながれた3Dプリンターが攻撃者から脆弱性を突かれた場合、プリントアウトされた3Dオブジェクト内部に何らかの欠陥が仕込まれる恐れがあるとしている。

研究者チームの1人で同大学電気工学 / コンピューター工学科教授 Ramesh Karri 氏は次のように述べる。「このような危険性から重要部品を保護するには、サイバーセキュリティ上の新たな対策とセキュリティツール導入が不可欠だ」。

積層造形技術( AM )は、3D CAD によって設計された3次元モデルファイルを3Dプリンターへ送信し、プリンター側はそれを G-code 生成ソフト( スライサー )で非常に薄い層状に分解したデータを基にプリントヘッドに指示を出し、プラットフォーム上に1層ずつ積み重ねて造形する( 通常の解像度は 25 μm かそれ以下、人間の髪の毛の太さは 100 μm、赤血球の直径は約 7 μm )。同研究者チームによると、プリントヘッド位置によっては強度面で 25 % ほどの違いが生じる可能性があるという。3D CAD データファイルにはプリントヘッドの位置決めに関する指示は含まれておらず、このため攻撃者が密かに設定変更できる余地が残っていると指摘する。

同チームは実験で mm 以下の非常に微小な欠陥を混入したデータを基にプリントアウトした結果、超音波イメージングといった通常の非破壊検査技術では欠陥が検出されなかったという。このため熱、光、湿気に長期間晒されると劣化しやすくなる。

同チームの1人で同大学機械工学科准教授 Nikhil Gupta 氏は次のように述べている。「高温高圧に晒される射出成形用金型といった部材に3Dプリント製品が使用されると、このような欠陥が最終的には何らかの障害として表面化しかねない。これらの欠陥を悪用された場合、リコールや訴訟といった事態に発展する恐れもあり、当該製品ユーザーおよび経済に与える影響は測り知れないだろう」

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